田沼意次は、時代劇の世界では悪者にされることが多いですが、ここに出てくる姿は時代に先んじた改革者です。狂歌の大田南畝も、他の小説に出てくるような軽く時代を生きた人ではなく、迷いに迷って生きたインテリです。この二人の物語が交錯するストーリー展開は、将軍家治の治世を活写しています。とても面白い小説でした。同じ作家の貨幣の鬼も、かなり読みごたえがありました。

人生が変わる哲学、と帯にありますが、人生が変わるほどではありません。でも、現代思想について学びたい人には、最上級の入門書です。ニーチェやマルクス、フロイト以来の思想の系譜を踏まえて、フランス現代思想の思考法がとてもよくわかります。雑然としていたものが整理された感じがしています。しかも、現在に至るまでの展開にも触れてあります。

仏教といっても歴史的な変遷があって、今、私たちが仏教と思っているものと、仏陀の教えとは、似て非なるというか、にてもにつかずというか、違うもののようです。この本を読めばわかります。既成のお寺さんやお坊さんに頼らず、自ら学ばねばならないというのは、悲惨な世の中を私たちは生きていかねばならないということです。悲しいことです。

大戦後、敗戦国日本ではアブレゲールと言われるニヒルな価値観を持った若者たちが登場したそうです。戦勝国アメリカでは、ビートジェネレーションと言われる若者たちが登場しました。敗戦国の若者も戦勝国の若者も、大戦によって損なわれたものは大きかったのです。オンザロードは、その寄る辺なさが、物凄いエネルギーで描かれています。

この夏に備えて買いました。晴雨兼用です。布が二重になっているので、強い陽射しも強い雨も防ぎそうです。この頃は強風が吹くことも多いので、16本の骨は耐えることができそうです。それにワンタッチで開閉できます。こうして堅牢で丈夫なため、重いです。そこは我慢しないといけません。この夏には、きっと役に立つと思います。

棟方志功の伝記小説です。奥様の視点から、奥様の体験として棟方志功を画いています。柳宗悦や濱田庄司に富本憲吉らの支援や交流の話も温かく描かれています。とくに、ゴッホの「ひまわり」への志功の憧憬とインスピレーションが、この作品の大切なテーマです。爽やかな感動とともに、一気に読むことができます。

平成の30年間に、日本社会の変容の様子がよく分かります。とくに人口問題については、もう不可逆的な高齢化と減少の道を辿っているとの指摘には愕然としました。日本の衰退は、外的な要因によるものではなく、内的な問題に起因している、その様子が上手く整理されて説明してあります。説得力があります。

映画が国民の娯楽の王者だった時代、Made in Americaの映画も文句無しに楽しめた。テレビ創成期には、ヤッバリMade in AmericaのTV番組が文句無しに楽しめたし、素朴に憧れでもあった。そういう時代の空気を、淀川長治さんの人生をつうじて、伝えてくれます。面白く読みました。

上方落語ファンとしては必須の本です。落語って、こうして創られていくんだなというプロセスとともに筆者の落語作家としての半生が、新作落語のネタの紹介を通じて語られ、昭和の後半から平成にいたる時代の空気が伝わってきます。爆笑王、桂枝雀さんのことをを思いだし、懐かしく、面白く読みました。

玄有氏は、面白く解説してくれます。般若心経は漢字ばかりで書いてあって、何のことやら？と思っていましたが、観世音菩薩が話して聞かせてくれるという体裁で、漢字262文字を解いてくれます。知的な理解は進んだと思います。次は、体験的理解です。まずは声を出して読んでみようと思います。