スピノザが生きた17世紀は、主権国家が誕生し、近代哲学や近代科学が大きく発展してゆく時代です。そんな時代に、スピノザは、近代哲学の成果を十分に吸収しつつ、その後近代が向かっていった方向とは別の方向を向きながら思索をします。スピノザは、「ありえたかもしれないもう一つの近代」を思索した哲学者だといえます(100分de名著　エチカ・スピノザより)。先行きの見えない混迷の時代を生きる私たちに必要とされる、当たり前だと思われていることを疑ってみる力＝別の角度から考えてみる力、を楽しみながら身につけられる一冊です。

個別の行為や個別の言質をとらえた場合、さらに一人の人間として見た場合、100％の悪、100％の善、いずれも存在しないのではないでしょうか。だからといって、ナチスは「良いこと」もした、ととらえることに問題はないのか。「良いこと」と思われるものも、ナチスの本質を踏まえてなお「良いこと」と言えるのか。真摯にかつ理性的、論理的に検証がなされています。ロシアのウクライナ侵略、パレスチナ問題、「教育勅語にも良いことが書かれている」と繰り返す政治家のいる日本、これらにも通底する視点が学べる一冊です。

横浜港にクルーズ船が入港して2年7ヵ月余り、小中高の全国一斉休校から２年6ヵ月。過去最大の感染者を出しながら、医学的・科学的エビデンスのない場当たり的対策に終始する政府や政治家。患者や家族、医療従事者や教育関係者への憎悪にも似たバッシングや差別が横行したことをまるで忘れたような世間やメディアの在り方に暗澹たる気分になりながら過ごす日々の中で出会ったこの本に、人としての誠実さ、日本という国の希望を教えられたように思います。前作「臨床の砦」と合わせて読むとなお心に刺さります。

「権力は腐敗する、絶対権力は絶対的に(徹底的に)腐敗する。」政治学の世界では有名な言葉ですが、安倍政権の今を言い当てた言葉でもあると思います。「現実に適合した憲法に変えよう」という動きが急ピッチで進んでいますが、「憲法を徹底的に吟味して、現に起きている諸問題を解決していく」ことが政権を担う者のとるべき立場です。逆立ちした理屈をこねまわすのではなく、近代的立憲主義に立った政治であるために欠くことができない視点を与えてくれる、今こそ読むべき一冊です。

掌の中のツールで世界中の情報を集めることができる今。「常識」も「事実」も「真実」も、自分の意志で手に入れることができると多くの人が信じている時代。でも、自分が知っている「事実」は本当の「事実」なんだろうか？そもそもそんな「事実」が現に起きているのだろうか？「常識」を疑わない私の記憶は正しい記憶なんだろうか？そもそも「私」は「誰」なんだろう？混沌、カオスの世界を生きる私たちに、鋭い問いを投げかけ続ける、これぞ三崎亜紀という一冊です。

安倍首相が退陣表明をしました。体調不良のためとのことで、やむを得ないことだと思います。しかし、森友問題、桜を見る会問題など、丁寧に説明するといいながら、一切の説明がなされなかった問題が多く残されています。政治家や官僚のモラルを崩壊させた内閣だったという歴史的評価がなされないためにも、真実をつまびらかにしてほしいものです。赤城さんの著書を読み、その思いを強くしました。多くの人に読んでほしい一冊です。

「男」たちは男性である事の特権を批判されます。そんなつもりはなくても差別に加担していると言われます。「おじさん」はその代表格だとラベリングされます。でも、現代の資本主義、自由主義の流れの中で、生きることにつらさや苦しさを感じ、どこか後ろめたさも感じている「おじさん」が多くなっていることも事実です。男がつらい！現代社会の現実を、「おじさん」と「副業」というキーワードで明らかにしていきます。

実家の倉庫の壁のトタンが剥がれたため、急遽ポリカーボネート9尺×２枚を貼り付けることにしました。電動工具は費用もかさむので、ガイド付き波板切りを購入しドライバーを使ってネジ90本で固定したのですが、思った以上に錐の切れあじが良く、1時間半程度で作業を終えることができました。右腕にはやや負担がかかりましたが、総額8000円程度でそれなりの見栄えに仕上がったので満足しています。

40何年振りかで読みました。半世紀以上前に書かれたとは思えないストーリー性や描写に感激しました。さすが漫画の神様ですね。21世紀になっても、自己利益のみを追求している地球人を見るにつけ、宇宙の知的生命体が超兵器を埋めないと平和を希求できないままの、深化も進歩もできていない地球人にため息が出てしまいます。我が身を振り返りながら、三方よしの精神を思い起こしています。

「花の中３トリオ」の一学年下だった私の、思春期ど真ん中を彩ってくれたあれやこれやが懐かしい写真付きで紹介されており、一ページ一ページ、青春時代を振り返りながら見つめました。中でも、「祭りの準備」の舞台中村市に隣接する町出身だけに、75年の公開時の街中が興奮状態にあった幡多や高幡の様子が強烈な印象として残っていることに改めて気づきました。50代以上の必読の書です。