ブッダ物語/田辺和子
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ブッダの生涯がわかる本
2023/12/11
ブッダ(釈迦/ガウタマ・シッダールタ)の誕生から死に至るまでの流れがとても手軽に学べる本です。 「岩波ジュニア文庫」ということで本来は少年少女向けの本にはなっていますが、大人が読んでも十分に読み応えがあるものだと思います。いや、寧ろ大人こそ読むべきものだと考えます。 ゴータミー、パンタカ、アングリマーラ……彼ら個性的な人物がブッダの説法によって救われる様子は……何と言いましょうか、ブッダの優しさと知性もそうなのですが、それと同じくらい、彼らの誠実になろうと思う気持ちも光っているように感じます。 なんか最近、心を科学的に分析しようとかいう風潮があるようですが、ゴータミーやパンタカへの説法を見ていると、科学的な分析は本当にくだらないと思います。実際、切羽詰まった状態の人間の頭の中は真っ白で分析も何も無く、ただただ「どうしよう!」と藻掻いてる状態です。そのような状況の人に「自分の心を科学的に分析しよう!そして感情をコントロールしよう!」とか何だの物知り顔をして教えるのはあまりにも酷です。そうではなく、ブッダのように相手の「気持ち」を理解して、親しみを込めて救いの手を差し伸べるべき……だと思います。
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車輪の下/ヘルマン・ヘッセ
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エリート少年の転落物語
2020/10/31
頭脳明晰で前途洋々と思われたエリート少年・ハンスが凋落していく物語。 疑うことを知らず、大人の言うことに従い夙夜勉学に励んでいたハンスは一流校に入学したものの、いつの間にか世間知らずの孤独に陥ってしまった。ある時、やんちゃな少年・ハイルナーに出会うとハンスはそれまでの自分に疑問を抱き始め、勉学が進まなくなる__。 ジレンマに陥った少年の心から花びらが一枚ずつ散っていく描写は見事です。幼少期より頭脳に堅く形成された回路を自力で破るのにハンスはあまりにも無力でした。それどころか日々の学問はハンスを蝕み血液を額に閉じ込めます。だからこそ、それを破れるのはハイルナーしかいないと思い、ハイルナーに興味を持ったのかもしれません。 ハンスは生まれつき頭はとても良いが、だからと言って断トツに頭が良いわけではなく、むしろ誰よりも純粋に自然を愛する心こそが稟性だったように思えます。それに気づく大人がいたのなら、ハンスはまた違った人生だったのかもしれません。 全体を通したイメージは太宰治の『人間失格』や、サン=テグジュペリの『星の王子様』を彷彿とさせます。形式にとらわれすぎた現代社会を痛烈に批判したヘッセは流石。
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パンセ/パスカル
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0か100かの極端を脱するために
2025/6/9
とても分厚く、解説含め640ページほどあります。中身は、定義を立ててから理論を構築し、要素を緻密に吟味している論文のような文章……ではなく、パスカルが自身の思想を短い文章にして、それをいくつも書き連ねたメモ書きのようなものとなっています。そのため、論書というより箴言集・格言集に近いです。 欲望に塗れた人間社会への批判はとても鋭く、彼の持つ慧眼が遺憾無く発揮されていると感じます。また、パスカルがキリスト教徒というのもあり、キリスト教についての考察が頻出しますが、その割には、よく読んでみると彼のキリスト教観は過激ではなく、穏健で、時に東洋思想に近いものさえ感じさせます。 ──もしキリスト者になれないのだったら、せめて普通のまともな人間となってもらいたい。(p133) ──神の証拠を増すことによってではなく、君の情欲を減らすことによって、自分を納得させるように努めたまえ。(p162) ──炎は、空気なしには存続しない。従って、一を知るには、他を知らなければならない。このように全ての事物は、引き起こされ引き起こし、助けられ助け、間接し直接する(p50)……この辺りは仏教の縁起の思想を彷彿とさせます。
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反文学論/柄谷行人
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柄谷行人『反文学論』
2025/6/6
柄谷行人さんについては名前だけ知っている方で、彼の本を読んだのはこれが初めてだったのですが、とても面白い内容の本でした。彼のとりあげている作家とその作品一つひとつについては読んだことのないものが殆どでしたが、全体を通して柄谷さんの言いたいことは何となく掴めた気がします。 ある物事を何かの概念によって説明するのではなく、その物事をそのままに"体験"すること。そしてその体験で得られた"生の感覚"こそが一番大切なものであるということ。これは理屈で説明できるものではなく、理屈で説明不可なのは理不尽であると思うかもしれないが、とにかく、これが現実なのである。 概念(現象)の膜の奥に隠されていて、普段は気付くことの難しい、物事の本質を見抜くこと。自分で体験したことを真の意味で理解すること。 そのためには単に様々な作品を読んで目を養うのみでは足りず、自分の人生を反省し、自分の嘘や悲しみから逃げるのをやめ、自己欺瞞の皮を一つずつ剥がしていかなければならない。そしてそれを成し得た人こそが、本当に物事をフラットに眺めて本質を見抜く眼を得ることができ、良い文学作品を書くことができる、ということでしょうか。
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嘔吐 【改訳新装版】/ジャン・ポール・サルトル
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数年前に読みたかったが今読んでも楽しめた
2025/5/29
ロカンタンの言う"吐気"ですが、自分も数年前に同じ症状に罹った事があります。 症状のきっかけは彼とは違いますが、確かにあれは精神的なものから来る吐気でした。 当時の自分はやたらと、論理とは何か、言葉とは何かなどと考えていたのですが、ある日、「そもそも"○○とは何か?"と論理によって探求しても循環論法に陥るだけだから無効であり、故に人間が論理で世界を知る事は不可能で世界に根拠は無い」という結論に辿り着きました。すると今まで心の拠り所としてたもの(論理的思考)が崩壊して、更に自分の精神も一緒に崩壊して、吐気を催したのを覚えています。 世界の存在に根拠が無い事を知ると、強い不安に襲われ、周りの物が今までとは違った"別の物"に見えるようになりました。そして頭の中で例の甘ったるくてベタベタした脳の肉が脳汁と共に溶けてしまいそうなグロテスクな感覚になり、「あっこれは危険だ」と本能的に危機感を覚えました。 その後しばらく安静にしていた所、2ヶ月位で何とか治まりましたが、あれはもう二度と味わいたくない辛い経験です。 今回この本を読んで、サルトルも自分と似た経験をしていたんだなと思い少し嬉しくなりました。
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DS/ラグナロクオンラインDS
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ラグナロクオンラインDS
2025/5/17
平成中期のアニメやゲームの絵柄が好きで、その頃の雰囲気の詰まったRPGは無いかとネットで探していたところ、これが出てきたので買いました。 「ストーリー前半はのんびりと陽気にワイワイと進み、後半になると仲間が1人抜けて少しシリアスな展開になるが、その後ボスを倒して仲間も戻り、最後にはハッピーエンド」という、普通によくあるタイプの王道のストーリーとなっています。 本家をやったことがない自分でも難なく普通に遊べて、操作も非常に簡単、攻撃は敵をタッチするだけ、スキルはタッチペンで斜線や丸を描いただけで発動可能など、操作は分かりやすくシンプルなものとなっていました。 ストーリーは短く、意外と早くクリアできますが、やりこみ要素(クリア後のクエスト、限界突破、蜃気楼の塔)もあり、クリア後も遊べる作りにはなっているみたいです。(私はやりませんが) ただ一応短所もあり、基本はタッチ操作しか受け付けていなかったりとか、同じ道を何度も歩く羽目になったりとか、後半の敵がやけに硬かったりとか、そういった問題点もありますが、しかし数百円で買える中古のゲームとして考えるならば、悪くないゲームだとは思います。
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PS/アークザラッド
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アークザラッド
2025/2/14
無性にRPGがやりたくなったのですが、日々の疲れであまり長い時間はプレイできなくなったので、すぐにクリアできるRPGは無いかと探していたところ、アークザラッドが速くクリアできると聞き、購入。 評判通り、十数時間でクリアしてしまいましたが、ストーリーこそ短いものの、ドット、曲、ボイスなど作り込みがすごかったです。石が3つ拾えるマップで、ストーリー進行に関係のない漫才みたいな会話が用意されていたりとか、闘技場で男に後ろから何回も話しかけるとアイテムが貰えたりとか、家に何度も帰宅すると、その度に主人公が母親に薬草をせびるという、勇者にあるまじき姿を見られたりとか、隠れたところに細かい作り込みが見られます。ここまで来ると「へっ、すげえ。何でこんなところにイベントがあるんだよ……」と良い意味で変な笑いが出てきます。隠れたところにこういう工夫が散りばめられていると、面白いを通り越して脱帽します。クリエイターの遊び心という、ある種の余裕がゲームのクオリティ(密度)を上げるのかもしれません。 自分はせっかちなのでチョコは入手してませんし、続編をやる予定もないですが、すばらしいゲームでした。
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大学・中庸/金谷治【訳注】
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中庸
2025/5/18
「道なる者は、須臾も離るべからざるなり。離るべきは道に非ざるなり」(p141) 「道は人に遠からず。人の道を為して人に遠きは、以て道と為すべからず」(p160) 上記の部分を読んだ時、孔子の「仁遠からんや。我れ仁を欲すれば、斯に仁到る。」(『論語』岩波文庫,p145.)や、仏教の如来蔵思想、道教の無為の為、洪自誠の「家庭に個の真仏あり、日用に種の真道あり。」(『菜根譚』岩波文庫,p44.)を思い出した。 無理に自らの外に道を求める必要は無い。無駄に高すぎる理想を持ったり、自分の身の丈に合わない善を行ったりする必要もない。勿論、馬鹿真面目なこともする必要もない(貞にして諒ならず)。そのような道は本来の道ではないのだから、いずれ時とともに離れていく。 そうではなく、本来の道、本当に重要な道というものは、生まれながらに誰でも持っている自分の良心をはたらかせることなのである。既に私の胸の奥にあり、置き去りにされていた自分の良心をもう一度はたらかせ、普段の行いを一つ一つ反省する。そうして浮き出てきた問題点を、地道に、直向きに改善していけば、自ずと道は開け、仁や誠へと近づくことができる。
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文章の話(岩波文庫)/里見トン
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人生哲学の書
2019/12/23
この本は、文章についての規則的な解説というよりか、著者の里見さんによる人生哲学であると言える。 故にページの半分以上が人生訓で書き尽くされてあるが、これを軽視してはいけない。 ある人が文章を書くということは、即ちそれに先立って彼なりの思想体系があることを意味する。そしてその体系は強固なものであればあるほど書き出される文章は重厚長大なものとなる。 もっとも、自明の理であるが、そういったものは改めて意識しないと忘れてしまう。 では、思想が強固であるということはどういうことか。「やさしいことはむずかしい」。この箴言に繋がる。原因-結果における推論は、一見難しいもののように思われがちだが熟練によって鍛えられる側面がある。しかしながら、我々のすぐ身近にあり、感覚器官でその一部を認識可能な、確かにそこに存在する根本的問題の解決は非常に困難を極める。 その一見簡単であるが難解な問題に正直に対峙することにより、自は鮮明さを増し、自ずと思想が体系化される。他人の思想を使うことは、幾分か考える手間が省けるし、実際それなりの効力を示すが、それはあなた以外の人間でもできることなのだ。
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リルケ詩集/ライナー・マリア・リルケ
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リルケ
2023/10/9
仕事の昼休み中に雑音の少ない公園のベンチでよく読んでいます。 まだ昼なのに、自分は情けないほどに疲れて、固まった表情のまま公園へと向かう。黒く腐ったベンチにもたれかかって空を見上げると、のっぺりとした白い空に浮かぶ太陽光が自分の黒い頭に焼き付くのを感じ、額の奥で静まろうとしていた神経がまた荒れる。 眼の前では枯れそうな黄色い雑草が非情な秋風に吹かれて淋しくカサカサと揺れており、風化したコンクリートに入った黒いヒビからは虚しく暗い死が臭ってきた。血液がドクドクとこめかみの血管を叩く中、いよいよ自分の精神に限界を感じつつ、リルケを開く。 ──「全ての星のうちの1つはまだ本当に存在するに違いない」。「お前は待っている。力強いもの、異常なもの、石の目覚めを……」。「この落下を限りなく優しく両手で支えている者がいる」。「自らを失うものは全てに見放される」。ああ、いい文章だ、ありがたい、力が湧いてくる。もう少し自分も頑張って耐えてみよう……。精神病なんて治せないだろうが、しかし1ミリだけでも希望だけは持って、やるべきことだけはやろうと思う。 リルケ、ありがとう。
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